SHIBAYAMA
WORKS
アルケミア・タペストリー
ここで紹介する作品は、タイムマシンで大昔のアートを連れて戻ってきたような気分にさせてくれます。これは元々タピスリーとしてフランス北部にあるボーヴェの聖堂に15世紀から18世紀まで実際に飾られていました。それをCGで今のエッセンスや風景を取り入れながら現代に甦らせてみました。 よく見るとパソコンや車も描かれていたり、美味しそうなシェフの料理も差し出されています。また、人物の大方の顔は私自身の顔をモーフィングという技術でこしらえてみました。ですから王様や家来そして聖パウロは私にそっくりな分身です。そんな遊びも試みました。アクアパッツアの日高シェフやジローラモさんのお顔も友情出演してくれています。
そのタピスリーは1460年頃、司教ギョーム・ド・エランドによって聖堂に寄贈されたのですが、時を経て散逸或いは消失してしまい、今では現存しているのかどうかはっきりしておりません。しかし19世紀にはまだその一部が残っていたようで、模写による作品集がフランスでマンガのようなエッチングの線画として出版されていました。
その本に付された解説によると、ギョーム・ド・エランドは1443年にフランス・イギリス間で結ばれた休戦条約を自身の司教就任への祝福と考え、聖堂に寄贈する記念物の製作を思いついたとあります。その記念物がこれらのタペスリーの大もとであり、それらには彼が休戦に対して望んだ言葉「Paix(平和)」と彼の紋章が散りばめられています。キリストの12使徒の1人であった聖パウロの生涯を主題としており、先に述べた作品集には当時残っていた6点が模写されていました。
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
キリストの教えに「汝の隣人を愛せよ」ということばがあります。今、この隣人という概念はとても重要な問題をもっていると思います。自分以外の最も近距離にいる同じ身体的機能を持つ隣人に対して、自分がどの様な存在であり、隣人にとって、自分がはたして共存性があるかどうかということ、隣人にとっての隣人すべてはクリアーな連鎖念と同じ意味をもつものだと思う。パウロが書き綴った物語(言葉のタペストリー)は、いまもその連鎖を継続させている。それは多分、人類が宇宙で暮らすようになっても生きつづけると思う。パウロはデジタルの概念を宗教者としてはじめて把握した人だと思います。
柴山信広も同意のデジタルの意味を武器にした作家であると思います。柴山信広の作りだす世界(デジタルタペストリー)がクリアーで魅力にあふれているのは、そのためであります。 奥村靫正
Produced in 1998
タペストリーとは織物でこの上写真のように、一枚の大きな絨毯のようであった。
Produced in 1998
Produced in 1999
Produced in 1999
Produced in 1999
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
“ALCHIMIA”は錬金術という意味。中世の人たちは金以外の物質から色々な処方箋にしたがって、金を作り出そうとした。それと同じ様に柴山氏も複数のソフトウェアの組み合わせにより、実現できない空間を演出していきたいという意思を持ち続けてきた。ここでは3Dアプリケーションの中のライティング機能をたくみに使い、アングルをあわせ、実際の写真スタジオで撮影したモデルとバーチャルな空間をマッチさせてレンダリングしている。後でPhotoshop上でテンペラ画のように鉄錆の色を下地に引いている。この絵を使った作品はこちら。
Produced in 1998
Produced in 1998
Produced in 1998
だいぶ前、CGコンファレンスに出席する為パリを訪れた時の事。雨が降る中、と或る古本屋の前を通りかかり、雨宿りに丁度いい場所だと中に入ってみた。フランス語が通じないと思ったのか、或いは私が暇そうに見えたのだろうか、店の主は私が古本を手にとり、見ているのを気にもとめない様子だった。本棚の上の方に手をのばしてみると、そこにはカビ臭い匂いのする1冊の大型本があった。数ページめくってみると、ただのアウトラインだけで陰影もなく、あわただしい時間の中で制作されたのではないかと思わせるようなエッチングの作品集である。本はかなり痛んでおり、紙は酸化し、染みだらけだった。私は元の所に本を戻し、店のおやじさんに眼鏡越しにちらりと見られたが、挨拶をするでもなく店をあとにした。
パリの交差点を3つ程過ぎ、地下鉄に乗り、レパブリカ広場に戻ろうとしたのだが、しかし私は途中で地下鉄を降り、再びもときた道を引き返してしまった。あの本を購入する為に古本屋へ戻ったのである。
それから7年間、この本は私の所で静かに眠っていた。復元可能なテクノロジーが熟成するのを待つかのように。
今回、このタペストリーを蘇らせるのに私は大型のプロッターを使用している。そしてプロッターに、かつてジオットが行ったであろう方法、つまり兎のニカワを溶き、ボローニャ石膏を用いて特製のキャンバス地を作った。少しずつ処方を変え、何種類も作りテストを重ねていった。今の時代だからこそ、私は逆に古き物への在り方に気を配りたかった。つまり温故知新である。その結果、限りなく現代と古典が融合し始めた。これがとても面白い。コンピュータで制作するにあたりいくつかの問題点が生じ、作業が滞る事もあったが、日本のファションブランドJUNの4Dboxのテックス1と2がそれらを解決してくれ、フォトショップやその他のソフトのバージョンがこの絵の為に上手く機能し始めるようになった。1998年のコンピュータ黎明期後の日本でも面白いソフトが出来始めた。20年以上前の事である。これから益々「頑張れニッポン」になって欲しい。