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執筆者の写真柴山信広

「正直さ、素直さ」はSNS時代を生き抜く物語のヒントに。企業のメッセージはいわば「王の語りかけ」だと思う。

ありのままの企業姿勢を伝えるメッセージは、オーディエンスに「消費行動を起こす事」の先に存在する「共感出来る情報」を考える上でのヒントになり得るのではないだろうか。そういう意味で、この広告はSNS時代を生き抜く企業という現代の「王様」のメッセージの信頼感を考えさせるアプローチの起源になると思う。「Thinksmall」を日本に持ってきた西尾忠久氏の今から50年ほど前の当時の解釈は「小さいことが理想」。このメッセージは今でもさらに強さを増していると思う。この「「小さいことが理想」という言葉のなかに「小さくていいじゃない」「身の丈にあったもの」という意味が込められているように捉える事でこの広告に現在にも通ずるメッセージのエッセンスが詰まっているように思える。現在では、環境団体を含む不特定多数のオーディエンスがソーシャルメディアを通じてすぐにリアクションが可能だ。そのような状況下で、消費者というターゲットが「消費を考える人々」に変化して来た事とともに「ものいうオーディエンスに変化」し、企業が解き放つメッセージは意図していないリアクションを産む事もありえる。そのような視点で「Think small」と、その時代を代表したワーゲンの他2つの広告をみていきたい。



「Thinksmall」は51年前の1963年に出されたフォルクスワーゲンの広告。大きな画面の中央やや左に小さく車がレイアウトされ下部にコピーと説明があるという大変シンプルな内容だ。コピーの見出しには「Thinksmall」とある。大きなクルマがステータスを象徴していた時代だったが、この小さな車のキャンペーンは大成功した。これは西尾忠久氏がアメリカの広告の考え方として日本に紹介したのだが、このときの彼の翻訳は「小さいことが理想」。ボディコピーとその訳はこうだ。

Think small

Our little car isn't so much of a novelty any more.

A couple of dozen college kids don't try to squeeze inside it.

The guy at the gas station doesn't ask where the gas goes.

Nobody even stares at our shape.

In fact, some peop-Ie who drjyamu Ii ttle flivver don't even think 32 miles to the galIon is going any great guns.

Or using five pints of oil instead of five quarts.

Or never needing anti-freeze.

Or racking up 40,000 miles on a set of tires.

That's because once you get used to some of our economies, you don't even thinkabout them any more.

Except when you squeeze into a small parking spot.

Or renew your small insurance.

Or pay a small re'pair bill. Or trade in your old VW for a new one.


Think it over.

■訳文

小さいことが理想

12人以上もの大学生が押しあい、つめこみ競争をすることもなくなりました。

給油所のパート・タイマーがガソリンの注入口を訊いてうろうろすることもなくなりました。

車の外形に目を丸くされることも---ね。

じっさいのところ、私たちの小さな車はリッターあたり11km走るなんてことを信じない人も---。

そう、オイルも5クォートじゃなくて5パイントです。

ええ、不凍液もいりません。

タイヤも64,000kmはもちます。

てすから、私たちのエコノミーカーになされば、こういったもろもろは思案の外になるのです。

あ、駐車スペースは狭くてもいけるし、車の保険更新料も少くてすむんです。修理代も安いんです。車を下取りに出して新車になさるときもお得です。


考えどころですよね。

他にも正直で実直さを表しているものとして、「Cheap new.Expensive used.」「Lemon」がある。これも紹介しておこう。


Cheap new.


A new Volkswagen costs only $l,595. So you might think that a used one costs next to nothing.

Wrong.

Used VWs cost plenty.

The fact is, a Volkswagen depreciates less than any other car in the world. A 5-year-old Volkswagen is worth just as much as many 5-year-old domestic cars that cost twice as much to begin with.

Why would anyone sooner buy a 5-year-old VW than a 5-year-old something else?

Because most 5-year-old cars look 5 years old.

But not a Volkswagen.


Expensive used.


Soap and water makes any VW look like this years.

The VW also has a great reputation for putt-putting right past repair shops.

And for growing old gracefully.

You can get parts for the oldest VW as easily as for the newest; most are interchangeable from year to year.

This is what it boils down to: the VW has turned out to be the best car investment you can make. New or used.

So, if you can't find that cheap, secondhand VW you've always wanted, you still have an out.

Buy a new one.


And use it.

■訳文

新車が安い

フォルクスワーゲンの新車はたった1,595ドル。そこであなたは、こんなふうにお考えになりはしないでしょうか?

じゃあ、中古だったらまるでタダだろう。

違います。

中古車は高いのです。

というのは、フォルクスワーゲンは世界中のどの車よりも値下がりが少ないからです。

5年目のフォルクスワーゲンは、売りだし当初はその2倍の値段だった国内の多くの5年目の車と、ちょうど同じ値段です。

5年目の他の車よりは5年目のVWをみんな買いたがるのでしょうか?

たいていの5年目の車は、5年目らしく見えるからです。

フォルクスワーゲンはそうではありません。

中古が高い

洗剤と水があれば、どのVWもみんな今年の型に見えるのです。

VWはまた、修理店で簡単に直せるというのでたいへんな評判です。

年を重ねても美しいというのでも評判です。

最古の型のVWの部品だって、最新のものと同様に楽に手に入れることができます。

たいていはどの年式のものとも取り替えが可能だからです。

煎じつめればこういうことなのです。つまり、VWは車に対する最良の投資になるということ。新車でも中古車でもそうなのです。

ですから、あなたがいつもほしがっていらっしゃったあの安い中古VWが見つけられなかったとしても、まだあなたにはテがあるのです。

新車をお買いなさい。

それを乗りまわしてごらんなさい。




Lemon.

This Volkswagen missed the boat.

The chrome strip on the glove compartment is blemished and must be replaced. Chances are you wouldn't have noticed it; Inspector Kurt Kroner did.

There are 3,389 men at our Wolfsburg factory with only one job: to inspect Volkswagens at each stage of production. (3000 Volkswagens are produced daily; there are more inspectors than cars.)

Every shock absorber is tested (spot checking won't do), every windshield is scanned.

VWs have been rejected for surface scratches barely visible to the eye.

Final inspection is really something! VW inspectors run each car off the line onto the Funktionsprufstand (car test stand), tote up 189 check points, gun ahead to the automatic brake stand, and say "no" to one VW out of fifty.

This preoccupation with detail means the VW lasts longer and requires less maintenance, by and large, than other cars. (It also means a used VW depreciates less than any other car.)

We pluck the lemons; you get the plums.


■訳文

不良品

このフォルクスワーゲンは船積みされませんでした。車体の1ヶ所のクロームがはがれ、しみになっているので取替えなければならないからです。およそ目につくことがないと思われるほどのものですが---クルト・クローナーという検査員が発見したのです。

当社のウォルフスブルグの工場では、3,389人が一つの作業にあたっています。フォルクスワーゲンを生産工程ごとに検査するために、です(日産3,000台のVWがつくられています。つまり、車より検査員のほうが多いってわけです)。

すべてのショック・アブソーバーがテストされます(抜き取り検査ではダメなのです)。

ウィンドーシールドも全車が検査されます。何台もが、とうてい肉眼では見えないような外装のかすり疵のために不合格となりました。

最終検査がまたすごい! VWの検査員は1台ずつ車検台まで走らせていって、189のチェック・ポイントを引っぱり回し、自動ブレーキ・スタンドへ向けて放ちます。それで50台に1台のVWに対して”No"をいうのです。

この細部にわたる準備が他の車よりもVWを長持ちさせ、維持費を少なくさせるのです。

(中古VWが他の車に比べて高価なわけもこれです)。

私たちは不良品をもぎとります。

あなたはお値打ち品をどうぞ。

参考:きままデザイン研究所

http://www.shibayama.org/knowledge/000148.php webサイト 「創造と環境」


この時代からさらに企業のメッセージは進化をして来たがワーゲン広告での誠実で実直なメッセージは、「正直である強さ」を今でも保っていると思える。正直な「小さな王からの語りかけ」である「Think small」というメッセージが当時のアメリカ人の心を動かし、50年後の今でも我々に語り継がれている。補足ではあるが、ワーゲンのコンペティターであるキャデラックを考えてみたい。キャデラックのターゲットは当時も今も、会社役員、医師、弁護士、会計士である。1950年代といえば、アメリカはフロンティアイズムからの成長主義の流れの中で、国民の意識は権威や力を望んでいた。

またそれに憧れてきた若者の未充足な心でさえ刺激していくマーケティング手法が、主流となりはじめていた。


例えば、 「キャデラック、ロックンロール、ハンバーガーにコーク」 アメリカではキャデラックに乗って、ロックンロールを聞き、ハンバーガー片手にコーラを飲むことが良いことだ。とその時代の自由を謳歌するアメリカ人のライフスタイルを反映していたのだった。



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